動画の可逆圧縮コーデックについてのページです。
非可逆圧縮コーデックについては、下記記事を参考にしてください。
可逆圧縮コーデックとは
可逆圧縮コーデックとは、「圧縮したデータを元に戻したときに、データを劣化なく完全に元に戻すことができるコーデック」のことです。
動画ではありませんが、例えばいろんなものをダウンロードする時によく見るものに、「〇〇〇.zip」というのがあります。
あれも、可逆圧縮によってサイズを小さくしたもので、開くと元通り中に入っていたものが出てきます。
そんなイメージです。
ロスが無いので、ロスレス圧縮とも言われます。
動画の可逆圧縮コーデックにも色んな種類があり、それぞれ特徴があります。
可逆圧縮コーデックの種類
可逆圧縮コーデックで現在も主に使用されているものとして以下のものが挙げられます。
- Ut Video(Ut Video Codec Suite)
- HuffYUV
- Lagarith(Lagarith Lossless Video Codec)
- MLC Codec
- AMV2MT/AMV3/AMV4ビデオコーデック
それぞれ圧縮率やエンコード速度に違いはありますが、マルチスレッドに対応していないものを除いて極端な差は無いと思ってよいでしょう。
エンコード後のファイルサイズも、1:30秒の動画を(音声:リニアPCMで)エンコードすると1GB強のaviファイルと大きくなるので、ファイル容量を小さくしたい一般的な非可逆圧縮(mp4のh264など)のコーデックとは用途が全く違います。
各可逆圧縮コーデックの特徴
Ut Video (Ut Video Codec Suite)
無料で使用できる可逆圧縮コーデックの中で現在も唯一開発が続いているものです。
日本人による開発がなされているため日本語にも対応しており、(動画エンコード時の専門用語の意味が分かっていれば)設定が分かりやすいのも特徴の一つです。
色空間はRGBA/RGB/YUV422/YUV420と一通り対応しており現在でも度々更新がなされる数少ない可逆圧縮コーデックの一つです。
速度、圧縮のバランスよいコーデックですが、他のコーデックよりもエンコード速度が気持ち早いため、動画編集時の中間ファイルはもちろんデスクトップキャプチャーなどのエンコーダーとしても充分使えるコーデックとなっています。
少し前までYouTubeなどに投稿できないファイルが生成されるということがありましたが、現在の物は各種オプションを適切に使用することで投稿できるようになりました。
一例:OK例『ULY0 div8 median』『ULRG div8 gradient』、NG例『ULY4 div8 median』『UMY2 div8 k1他 UM系全て』
ダウンロードページ
▶▶或るプログラマの一生
HuffYUV
かつては「動画の可逆圧縮コーデックといえばコレ!」といわれていたくらい有名な物ですが、現在は公式サイトは消滅してありません。
今は2ch有志によるブランチ版(改良した派生版)が配布されています。
現在でも素のままデコードできる環境も多く、標準で再生および変換に対応しているソフトもそれなりにあります。
残念ながら公式サイトは消滅して、オリジナルのHuffYUVエンコーダーを入手することは出来ませんが、2chの有志が改良した派生版をダウンロードすることは可能です。
改良点は『マルチスレッドに対応(制限有り)』『日本語化』などの特徴があります。
ダウンロードページ
▶▶https://www29.atwiki.jp/lossless/pages/11.html
Lagarith (Lagarith Lossless Video Codec)
設定項目がシンプルなので、各項目毎の違いも試しやすく通常のエンコードはもちろん、デスクトップキャプチャーとしても充分使える仕様となっているコーデックです。
エンコードスピードは遅めですが、そのぶん高めの圧縮率を誇ります。
色空間はYV12/YUY2/RGB/RGBAに対応し32bit、64bit両方にも対応しています。
古くからある形式でもあるため扱える場所も多く、YouTubeなどにもそのままアップロードできるようです。
ダウンロードページ
▶▶https://lags.leetcode.net/codec.html
MLC (MLC Codec)
おそらくこの中では最も高い圧縮率を誇っているコーデックです。
圧縮率を上げると速度低下が顕著になります。
また、速度を優先したとしても元々のエンコード速度が早くないため、リアルタイムで速度を必要とするデスクトップキャプチャーなどの用途には向きません。
マルチスレッドには対応していますが、色空間はRGBのみ対応となっています。
ダウンロードページ
▶▶http://www.linek.sk/mlc/
AMV2MT・AMV3・AMV4ビデオコーデック
アマレココなどデスクトップキャプチャーソフトなどとセットで扱われる、この中では唯一有料の可逆圧縮コーデックです。
こちらも日本人による開発なので、ネット上の日本語ドキュメントや解説ページの量も多く設定が分かりやすいのが特徴でしょう。
かつてはアマレコシリーズの一部ソフトウェアで使用する分には無料で使用することができましたが、現在は完全有償のシェアウェアとなっています。
有料登録せずに使用する場合には、動画内にAMVというウォーターマーク(透かし・ロゴ)が強制的に入るようになっています。
どちらかというとリアルタイムエンコードに向いたコーデックなので、キャプチャーメインで使用することが多いコーデックとなっています。
ニコニコ動画のゲーム実況などはAMVの透かしが入っている動画がよく見られます。
こちらも数少ない現状で開発が続いているコーデックなので、(未登録の物も含めて)それなりに使用者の多いコーデックと言えるでしょう。
アマレコ公式サイト
▶▶http://www.amarectv.com/index.html
各コーデックの使い分け方
Ut Video (Ut Video Codec Suite)
どれを使って良いか迷ったらとりあえずコレを使っておけば良いと言える万能のおすすめコーデックとなっています。
理由としては現在も開発が続いており不具合があった場合改善がなされる可能性が高いこと(あくまで善意で公開されているフリーソフトウェアのエンコーダーなので作者に改善を強制してはいけません)。
弱点だったYouTubeへの投稿もオプション設定を変更することで可能になっていること。
デスクトップキャプチャー、編集途中の中間ファイルの保存、動画ソース保存のどの用途にも使えるという汎用性の高さがあるからです。
HuffYUV
かつては動画の可逆圧縮コーデックとして非常によく使われていた物ですが、現在公式サイトは消滅しオリジナル版の入手は難しく、2ch有志が改良したブランチ版のみが入手が容易となっています。
基本的に改良版の方が日本語化、マルチスレッド化、インストーラーの64bit対応など現在の環境でも使いやすいようになっていますが、マルチスレッドを有効にして作成した場合一部の動画編集ソフトや、FFmpegなどの変換ソフトで正常に読み込みできない可能性があります。
そういった場合はマルチスレッド使用オプションをオフにしてエンコードを行うと良いでしょう。
FFmpegなどバージョンの古い物でも対応していることの多い形式なので、古めのソフトで変換や編集などを行う場合におすすめです。
Lagarith (Lagarith Lossless Video Codec)
上記のHuffYUVが使えない場合の代替として用いられることの多いコーデックとなっています。
こちらもHuffYUV同様それなりに古くから使われているコーデックなので、対応している変換ソフトもそれなりにあります。
エンコード速度、圧縮率もバランスが取れており、32bit64bitどちらも同梱しているので、最新の64bit編集ソフトと使い慣れた古くからある32bit編集ソフトを併用する場合のおすすめコーデックとなっています。
速度を優先すればデスクトップキャプチャー用エンコーダーとしても使える程度の性能を持っていますが、どちらかといえば動画の中間ファイルの作成に用いられることの方が多いでしょう。
MLC (MLC Codec)
こちらは圧縮率の良さこそある物のエンコード速度がふるわないためキャプチャー用途には向かず、あくまで動画編集時の中間ファイルとして使用する方がおすすめです。
ですがHuffYUVやLagarithに比べてややマイナーなので将来的に対応するソフトがなくなり読めなくなる可能性も考えられるため、動画を長期保存する為のエンコーダーとして使うのはあまりおすすめできません。
AMV2MT・AMV3・AMV4ビデオコーデック
こちらのコーデックは公式サイトが推しているとおり『アマレコTV4 Live』『スーパーアマレココ』などのデスクトップキャプチャーに特化した可逆圧縮コーデックとなっています。
近年ゲーム実況などの動画が流行していることもあり、これらキャプチャーソフトの需要も高まっているため有料ではありますがそれだけの価値があるエンコーダーとも言えるでしょう。
もちろん「動画キャプチャー目的の方にオススメ!」というのは言うまでもありません。
AMV2(MT)、AMV3は32bit対応でWindows2000/XP SP3/7対応、AMV4は64bit対応で、Windows 8.1/10(64bit版のみ)、使用できるアマレコシリーズのキャプチャーソフトもそれぞれ限定されているので、どちらの方が優れているとか考える必要がなく、使用ソフト&環境に応じたものを導入すると良いでしょう。